目的
運動器疾患(加齢性疾患、外傷、先天性疾患、感染、腫瘍など)は小児から高齢者まで幅広い国民が罹患し、国民の健康寿命を損なう主因の一つです。特に加齢により移動能力が低下し要介護のリスクとなるロコモティブシンドロームは推定患者数4700万人とされています。運動器疾患の手術件数は年間120万件を超えており、社会の高齢化の影響を受けて年々増加の一途ですが、全国規模の包括的なレジストリーが存在しないためその全容は不明のままです。そこで公益社団法人日本整形外科学会(日整会)では、運動器疾患に対する手術治療に関するビッグデータに基づいたエビデンス構築を目的に大規模運動器疾患レジストリーシステムであるJapanese Orthopaedic Association National Registry (JOANR)を立ち上げました。JOANRに登録された医療情報を分析することにより医療の質の向上を図り、国民に対する良質な医療の提供、適正な医療レベルの維持、また、医療経済の最適化を目指します
展望
JOANRでは運動器疾患に対するほぼすべての手術を網羅的に登録し大規模データベースを構築します。人工関節手術や関節鏡視下手術に関しては領域に特化した詳細な情報が登録され、今後は他の専門領域特異的な情報登録も行われることが見込まれています。また、2021年度からは本登録データは専門医制度への利用も可能になります。さらに、将来的には保存治療や検査など運動器疾患医療を幅広く網羅していく予定です。
運営形態
JOANRは日整会が運営しますが、手術領域別には関連学会が運営実務の一部を担当します。
また、医療情報の登録は各医療機関がインターネット上の登録サイトを通して行います。
登録対象のデータ
運動器疾患に対して日本整形外科学会員が所属する施設で実施された整形外科手術で、ごく一部対象外はありますが、ほぼすべての術式が含まれます。
患者情報/手術入院情報/手術情報/術後情報
データの収集方法
日本全国の参加施設診療科からインターネットを介して症例のデータを収集します。症例データ登録のためのWEBシステムから参加施設診療科のデータ登録担当者が手術・治療の情報を登録することで、データが収集されます。
他レジストリーとの連携
データの活用方法
JOANRに登録されたデータは、次のような形で利活用されます。データの利活用は原則的に日本整形外科学会員に限られますが、医学的・人道的な観点からその情報を製造販売企業および審査機関と共有するため、あるいは医療の進歩や安全性向上を目的とした医療機器の開発や改良のために他の機関に提供されることがあります。その際には日整会内に設けられるJOANR運営を担当する委員会で妥当性の審議を行い、必要であれば日整会倫理委員会に審査を付託いたします。
- 診療報酬改定の新規、改正要望のための資料
- 手術合併症や治療成績評価
- 治療を行う医療機関(整形外科)の特徴や医療水準の評価
- 特定の手術の予後情報
- その他