理事長挨拶

 現在、社会の高齢化が進み、加齢性疾患を中心に整形外科手術の件数は年々増加しております。厚生労働省のNDBオープンデータによれば整形外科領域における手術数は2018年の段階で年間120万件を超えております。

 日本整形外科学会(日整会)では2003年から当時のインプラント委員会が中心となり人工関節のレジストリー構築が検討され、2006年にパイロット研究が開始されました。2011年からは日本人工関節学会にレジストリーの運営が移行しております。

 2017年に山崎正志理事長(当時)は日整会として包括的な手術レジストリーを構築する方針を掲げました。整形外科症例調査・検討委員会(のちに症例レジストリー委員会に名称変更)が中心となり準備を開始し、厚労省から臨床効果データベース整備事業実施団体として補助金交付も受け、システム構築を進めました。2018年12月に日整会倫理委員会の承認を受け、2019年3月にはシステムが完成し、委員会委員の各施設において倫理委員会承認後に試験運用を始めました。試験運用の結果をもとにシステムの改良を継続し、2020年4月に本格運用が開始されます。

 レジストリーは2階建て構造になっています。1階部分には全手術症例が登録され、手術に関する基本的なデータが入力されます。2階部分は人工関節手術や関節鏡手術などのより詳細な手術データが入力されます。レジストリーが本格的に運用されますと、毎年100万件以上のデータが蓄積されていくことが期待されます。レジストリーに蓄積されたビッグデータは質の高い臨床研究、治療成績や治療レベルの解析とそれに基づいた臨床効果の改善、医療政策策定、診療報酬算定、製造販売後調査(PMS)、難病・稀少疾患の研究開発などに用いることが可能です。また、登録された症例は専門医の取得あるいは継続に用いられます。

 このようにレジストリーの構築と円滑な運用は本邦の整形外科の発展には不可欠です。一方で、レジストリーへの症例登録は手間のかかる作業です。日整会会員の皆様にはレジストリーの重要性を是非ご理解頂き、登録へのご協力をいただければ幸いです。

公益社団法人 日本整形外科学会

理事長 松本守雄